私は4歳からピアノを学び、15歳から近くの教会の礼拝でリードオルガンを弾き始め、22歳で大学を卒業した後、パイプオルガンを学びました。世の中では、鍵盤楽器は一つ弾ければどれも弾けると思われていますが、実はどれも構造が異なり、それによって奏法も違います。バロック期に盛んに演奏されたチェンバロも含め、音楽の歴史と共に変化、発展をしてきました。現在は電子ピアノ、またキーボード、電子オルガンなど電気を媒体として、またコンピューターを積載した楽器も存在するようになりました。特に音量の調節ができ、比較的小型でいつでもどこでも使える電子ピアノは、ピアノを学ぶ方たちの練習楽器としてピアノよりも多く普及しているのではないかと思います。
今回はピアノ、リードオルガン、パイプオルガン、加えて学生時代にチェンバロも弾いた経験から、「一つ弾ければどれも弾ける?鍵盤楽器」についてお伝えしたいと思います。
まず、歴史的に一番古い鍵盤楽器はオルガンです。現在は日本にも立派なパイプオルガンが多く存在するようになりましたが、歴史的には紀元前からある楽器です。そのころは3,4本のパイプと1オクターブの鍵盤、膝の上にのせて片手でパイプに空気を送り、片手で鍵盤を弾くような小型の楽器でした。
電気が発明されるとオルガンは電気のモーターによって風がパイプに送られるようになります。そして
近代、コンピューターが積載され、何千種類もの音色を記憶できるようになり、オルガンは2000年以上
文化、科学の発展と共に生きている楽器です。一方、リードオルガンは19世紀ころにフランスで発明された楽器です。長さ1センチ、薄さ1ミリくらいの薄い真鍮のリードが風によって震えて音が出ます。
音の出る原理はアコーディオンやハーモニカと同じです。ハーモニカの外枠を外すと中に細いリードが並んでいるのをご覧になったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?日本には19世紀ころ、アメリカ人の宣教師がキリスト教の礼拝の時に用いるために持ち込まれ、最近までは礼拝に用いられることが一番多い楽器だったと思われます。パイプオルガンは電気の発明によりモーターで風をパイプにおくるようになりましたが、リードオルガンは現在でも足元に2枚mの板を上下に動かしてリードに風を送りながら演奏をします。この二つのオルガンはどちらも素晴らしい特性を持っています。風の量を演奏者自身で調節しながら演奏できるリードオルガンはエスプレッションの厚みが豊かで、人間の声のように感情的な音色が出ます。パイプオルガンは4オクターブのペダルがあり、両足で駆使して演奏しなければなりませんが、ペダルの低音が音楽を支え、幅の広い、力強い音色が魅力です。また構造が違うのですから鍵盤の音の出し方も違います。リードオルガンは早くて軽いパッセージを弾くことが苦手です。パイプオルガンは規模によって指の力のかけ方は違いますが、音の歯切れはクリアで美しいのです。リードオルガンとパイプオルガンの違いを簡単に説明してきましたが、当然それぞれの楽器に適した楽曲があるのです。なかなか二つの楽器を並べて弾き比べることができないのですが、楽器によって、楽曲によって演奏の仕方も当然変わってくることをご理解いただけたでしょうか?
コメント